2024.04.24
シンニチ工業の紹介
ステンレス鋼の種類と特徴について解説
ステンレス鋼の種類と特徴について解説
目次
ステンレス鋼とは
ステンレス鋼の特徴
ステンレス鋼はなぜ錆びにくいのか
ステンレス鋼の種類と特徴
オーステナイト系ステンレス鋼
フェライト系ステンレス鋼
二相系(オーステナイト・フェライト系)ステンレス鋼
マルテンサイト系ステンレス鋼
析出硬化系ステンレス鋼
ステンレス鋼とは
ステンレスは英語でStainless Steelと言い、Stainlessとは、日本語で「錆びない」と言う意味です。
ステンレスは鉄(Fe)を主成分とし、クロム(Cr)やニッケル(Ni)などを含有させた錆びづらい合金鋼です。一般的には、クロムの含有率が10.5%以上以上の合金鋼がステンレス鋼と呼ばれます。
JISの種類の記号では、SUS(サス)と呼ばれ、金属組織の違いによって60種類以上のステンレス鋼が規定されています。
ステンレス鋼の特徴
ステンレス鋼は、鉄を主成分として、クロムを添加した錆びづらい合金鋼ですが、耐食性以外にも、耐熱性・加工性・強度など優れた特性を備えています。また、意匠性に優れていることも特徴と言えます。
ステンレス鋼は、様々な用途に応じて、鋼材のJIS規格で60種類以上の鋼種があり、さらに各社が開発した独自鋼種があります。
名前の示す通り、ステンレス鋼は優れた耐食性を有する材料ですが、特定の環境、使用条件の下では「錆びる」ことがありますので、正しく使い分ける事が大切です。
ステンレス鋼はなぜ錆びにくいのか
鉄にクロムを添加すると、クロムが酸素と結合して、表面に薄い酸化皮膜 (不動態皮膜)を生成します。この不動態皮膜がサビの進行を防ぎます。
また、この不動態皮膜は100万分の3㎜程度の極薄いものですが、一度壊れても周囲に酸素があれば自動的に再生する機能をもっています。
ステンレス鋼の種類と特徴
ステンレス鋼は、含有成分の量や熱処理によって結晶構造が変化し、用途に合わせて様々な特性を持った鋼種があります。使用する環境や加工などの用途に応じて、最適なステンレス鋼を選択するためには、ステンレス鋼の種類と、それぞれの特徴を把握しておく必要があります。
ステンレス鋼は、オーステナイト系、フェライト系、二相系(オーステナイト・フェライト系)、マルテンサイト系、析出硬化系の5つに分かれます。それぞれのステンレス鋼について詳しく解説していきます。
オーステナイト系ステンレス鋼
SUS304やSUS316、SUS304L、SUS316Lなどが代表的な鋼種です。ニッケルを含むため、他のステンレス鋼よりも比較的高価な素材です。
オーステナイト系ステンレス鋼は、延性と靭性に優れ、プレス・深絞り・曲げ加工などの冷間加工性が良好で、溶接性も優れています。さらに、耐食性にも優れており、低温、高温における性質も優秀です。ただし、600〜900℃の環境下で長時間経過すると、耐食性低下や脆化、塩化物環境での応力腐食割れが発生します。
優れた性質を持つため用途は広範囲にわたっており、家庭用品・建築部材・自動車部品・化学工業・食品工業、・合成繊維工業・原子力発電・LNGプラントなど広く用いられています。
基本的に磁性を持ちませんが、加工により磁性を持つことがあります。オーステナイトは、加工した箇所がマルテンサイトに変化することで加工硬化が起こり、加工が困難になることがあります。変化したマルテンサイトを加工誘起マルテンサイトと呼び、これが耐食性を低下させ、磁性を持つ要因になります。
フェライト系ステンレス鋼
SUS430やSUH409L、SUS436L、SUS444などが代表的な鋼種です。フェライト系ステンレス鋼は、クロムに加えてモリブデンや銅などを添加したステンレス鋼で、常に磁性を持ちます。ニッケルなどの希少な成分が入っていないため、比較的安価な素材です。
マルテンサイト系よりも成形加工性と耐食性が優れており、溶接性も比較的良好であるため、一般耐食用として広く用いられています。一方で、ステンレス鋼の中では強度が低いという特徴もあります。
耐食性はオーステナイトには劣りますが、ニッケルを含有しないため、オーステナイトの欠点である応力腐食割れがほとんど発生しません。極低炭素・窒素のSUS444の高純度フェライト系ステンレス鋼は、さらに耐食性が強化された種類で、塩化物環境下での応力腐食割れに強い素材です。
フェライト系は、475℃程度の温度で一定時間保つと、クロム濃度の低い固溶体とクロム濃度の高い固溶体の二相に分かれ、急激に脆化します。脆化を起こした場合は熱処理が必要であるため、この温度域の使用には注意が必要です。
用途としては、厨房用品・建築内装・自動車部品・ガスや電気器具部品などに使用されています。
二相系(オーステナイト・フェライト系)ステンレス鋼
SUS329J1が代表的な鋼種です。二相系ステンレス鋼は、オーステナイトとフェライトの二つの金属組織をもつステンレス鋼です。物理的性質はフェライトとオーステナイトのほぼ中間です。
耐海水性、耐応力腐食割れ性に優れ、そのうえ強度も高いという性質があります。これらの特性により、海水用復水器、熱交換器および排煙脱硫装置などの公害防止機器や各種化学プラント用装置に用いられています。
マルテンサイト系ステンレス鋼
SUS403やSUS410などが代表的な鋼種です。マルテンサイト系ステンレス鋼は、炭素の含有量が多く、主に焼入れと焼戻しをしたものを使用します。
高い強度と耐摩耗性、靭性が特徴です。不動態皮膜の形成に必要なクロムの含有量は、質量パーセント濃度で11%~18%と他のステンレス鋼よりも少ないため、耐食性は他のステンレス鋼に劣ります。
マルテンサイト系ステンレス鋼は、全ての素材が磁性を持ちます。高い強度と耐摩耗性から、軸受けやベアリングなどの部品の素材として使われることも多いです。強度はステンレス鋼の中でも特に高く、オーステナイト系、フェライト系よりも優れています。
析出硬化系ステンレス鋼
SUS630などが代表的な鋼種です。析出硬化系ステンレス鋼は、析出硬化処理(熱処理)によって非常に高い硬度をもったステンレス鋼です。原材料が高く、製造が難しいことから、比較的高価な素材です。磁性を持ちます。
焼入れ・焼戻しをしたマルテンサイト系ステンレス鋼と同レベルの強度があり、高い強度と耐食性が求められるエンジン部品、航空機・ロケットの構造材などに使用されています。
耐食性はフェライト系・マルテンサイト系ステンレス鋼よりも優れ、オーステナイト系ステンレス鋼よりも劣ります。強度と耐食性のバランスが優れています。
ステンレス鋼の表面仕上げの種類
名称 | 表面仕上げの状態 | 表面仕上げの方法 |
No.2D | 灰色で光沢が少ない | 冷間圧延後、熱処理、酸洗またはこれに準じる処理を行って仕上げたもの。また、つや消しロールによって、最後に軽く冷間圧延したものも含める。 |
No.2B | No.2D仕上げより滑らかで、 やや光沢がある |
冷間圧延後、熱処理、酸洗またはこれに準じる処理を行った後、適切な光沢を得る程度に冷間圧延して仕上げたもの。 |
No.3 | 目が粗い研磨仕上げ | JIS R 6010によるP100~P120で研磨して仕上げたもの。 |
No.4 | No.3より細かい目の研磨仕上げ | JIS R 6010によるP150~P180で研磨して仕上げたもの。 |
#240 | No.4より細かい目の研磨仕上げ | JIS R 6010によるP240で研磨して仕上げたもの。 |
#320 | #240より細かい目の研磨仕上げ | JIS R 6010によるP320で研磨して仕上げたもの。 |
#400 | 鏡面に近い光沢がある研磨仕上げ | JIS R 6010によるP400で研磨して仕上げたもの。 |
BA | 光沢がある | 冷間圧延後、光輝熱処理を行ったもの。 |
HL | 長く連続した研磨目を持った仕上げ | 適当な粒度の研磨材で連続した磨き目が付くように研磨して仕上げたもの。 |
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