2024.05.17
シンニチ工業の紹介
SUS304とは?SUS304の特徴やSUS316・SUS430との違いについて解説
SUS304とは?SUS304の特徴やSUS316・SUS430との違いについて解説
目次
SUS304の規格
SUS304の質量
SUS304の化学成分
SUS304の機械的性質
SUS304の板厚の種類
SUS304とSUS316・SUS430との違い
SUS316とは
SUS430とは
その他の類似鋼種について
SUS304Cu
SUS304N1
SUS304N2
SUS304LN
SUS304J1
SUS304J2
SUS304とは?SUS304の特徴
SUS304とは、JIS規格「熱間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯:JIS G 4304」及び、「冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯:JIS G 4305、」などに規定されているステンレス鋼で、最も一般的と言える鋼種です。
用途としては家庭用品から建築部材・自動車部品・化学工業など様々な分野で使用されています。
SUS304はクロムを18%、ニッケルを8%含む、オーステナイト系ステンレス鋼の代表的な鋼種であり、耐食性、加工性、溶接性など多くの優れた特性を有しています。また、磁性を持ちません。
SUS304はステンレスパイプとしても、配管用ステンレス鋼鋼管などで最も多く流通しており、汎用性が高い鋼種だと言えます。しかし、SUS304だけでもSUS304Lなどの類似鋼種が存在しており、SUS316やSUS430といったその他の鋼種と比較される事もありますので、SUS304の特徴やそれらの他鋼種についても知っていただければと思います。
ステンレスパイプの事ならシンニチ工業へお問い合わせ!
シンニチ工業では、鋼管JIS規格の配管用ステンレス鋼鋼管などで一般的に流通していない特殊なステンレス鋼種や、規格サイズにない特殊サイズのパイプを、少量から製造できる強みがございます。
・SUS304を使用しているが、他の鋼種と比較すると価格が高いので、他の鋼種を検討してみたい
⇒オーステナイトやフェライトなど様々な鋼種の製造実績がございます!試作対応も可能です!
・ジャストサイズのパイプが見つからずに、近似規格サイズを使用している
⇒φ42.7~φ165.2の間で、60サイズ以上の金型を保有しております!
・使用量と発注ロットが合わずに、在庫過多になっている
⇒1本からの板巻、500kg程度からの連続造管など、条件に合わせた最適なご提案を致します!
特殊鋼種・特殊サイズ・小ロットでお困りの方はお気軽にお問い合わせください。
SUS304Lとは?
SUS304Lは、SUS304よりも炭素の成分を減らすことで鋭敏化の発生を抑え、耐粒界腐食性を向上した鋼種です。SUS304の後に付いている「L」が、「Low carbon=低炭素」を表しています。
(※鋭敏化とは、ステンレス鋼が550~900℃程度加熱された際に炭素とクロムが結合し、耐食性を低下させてしまう現象のことを指します。)
SUS304LはSUS304と比較して高価な材料で、SUS304と比較すると流通性も良くないため、使用条件などを考慮して使い分ける必要があります。
SUS304の規格
SUS304の規格は、JIS規格「熱間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯:JIS G 4304」及び、「冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯:JIS G 4305、」によって、質量、化学成分、機械的性質、標準寸法などが規定されています。
本記事では、それらの規格の中でも重要項目について纏めております。
SUS304の質量
SUS304の比重は7.93(g/cm3)です。SUS304Lも同じ質量ですが、ステンレス鋼は鋼種によって質量が異なるため、注意が必要です。
鋼板の重さ(kg)=7.93 × 板厚(mm)× 板幅(M)× 長さ(M)
鋼管の場合の材料係数は0.02491です。
鋼管の重さ(kg)=【外径(mm)- 板厚(mm)】× 板厚(mm)× 0.02491 × 長さ(M)
SUS304の化学成分
単位:%
種類の記号 | C | Si | Mn | P | S | Ni | Cr | Mo | Cu | N | その他 |
SUS304 | 0.08以下 | 1.00以下 | 2.00以下 | 0.045以下 | 0.030以下 | 8.00~10.50 | 18.00~20.00 | – | – | – | – |
SUS304Cu | 0.08以下 | 1.00以下 | 2.00以下 | 0.045以下 | 0.030以下 | 8.00~10.50 | 18.00~20.00 | – | 0.70~1.30 | – | – |
SUS304L | 0.030以下 | 1.00以下 | 2.00以下 | 0.045以下 | 0.030以下 | 9.00~13.00 | 18.00~20.00 | – | – | – | – |
SUS304N1 | 0.08以下 | 1.00以下 | 2.50以下 | 0.045以下 | 0.030以下 | 7.00~10.50 | 18.00~20.00 | – | – | 0.10~0.25 | – |
SUS304N2 | 0.08以下 | 1.00以下 | 2.50以下 | 0.045以下 | 0.030以下 | 7.50~10.50 | 18.00~20.00 | – | – | 0.15~0.30 | Nb0.15以下 |
SUS304LN | 0.030以下 | 1.00以下 | 2.00以下 | 0.045以下 | 0.030以下 | 8.50~11.50 | 17.00~19.00 | – | – | 0.12~0.22 | – |
SUS304J1 | 0.08以下 | 1.70以下 | 3.00以下 | 0.045以下 | 0.030以下 | 6.00~9.00 | 15.00~18.00 | – | 1.00~3.00 | – | – |
SUS304J2 | 0.08以下 | 1.70以下 | 3.00~5.00 | 0.045以下 | 0.030以下 | 6.00~9.00 | 15.00~18.00 | – | 1.00~3.00 | – | – |
上記の表は、「熱間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯:JIS G 4304」及び、「冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯:JIS G 4305、」に規定されている、オーステナイト系の化学成分表からSUS304を抜粋したものです。
SUS304の機械的性質
種類の記号 | 耐力 (N/㎟) |
引張強さ (N/㎟) |
伸び (%) |
硬さ a) | ||
HBW | HRBS又は HRBW b) |
HV | ||||
SUS304 | 205以上 | 520以上 | 40以上 | 187以下 | 90以下 | 200以下 |
SUS304Cu | 205以上 | 520以上 | 40以上 | 187以下 | 90以下 | 200以下 |
SUS304L | 175以上 | 480以上 | 40以上 | 187以下 | 90以下 | 200以下 |
SUS304N1 | 275以上 | 550以上 | 35以上 | 217以下 | 95以下 | 220以下 |
SUS304N2 | 345以上 | 690以上 | 35以上 | 248以下 | 100以下 | 260以下 |
SUS304LN | 245以上 | 550以上 | 40以上 | 217以下 | 95以下 | 220以下 |
SUS304J1 | 155以上 | 450以上 | 40以上 | 187以下 | 90以下 | 200以下 |
SUS304J2 | 155以上 | 450以上 | 40以上 | 187以下 | 90以下 | 200以下 |
a) 硬さは、いずれか1種類とする。 b) HRBの測定は、HRBS又はHRBWのいずれかでよいものとし、測定値の表示には、HRBS又はHRBWを明記する。 ただし、疑義が生じた場合の判断は、HRBSによることとする。 |
上記の表は、「熱間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯:JIS G 4304」及び、「冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯:JIS G 4305、」に規定されている、オーステナイト系の機械的性質表からSUS304を抜粋したものです。
SUS304の板厚の種類
標準厚さは以下の通りです。標準厚さであっても、板厚によって入手性が異なります。
シンニチ工業では、ステンレスパイプの製造範囲はt0.4~2.5mmと、薄肉サイズを得意としております。
標準厚さ(㎜) | ||||||||
0.30 | 0.40 | 0.50 | 0.60 | 0.70 | 0.80 | 0.90 | 1.0 | 1.2 |
1.5 | 2.0 | 2.5 | 3.0 | 4.0 | 5.0 | 6.0 | 7.0 | 8.0 |
9.0 | 10.0 | 12.0 | 15.0 | 20.0 | 25.0 | 30.0 | 35.0 | |
*この表以外の厚さについては、受渡当事者間の協定による。 |
上記の表は、「熱間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯:JIS G 4304」及び、「冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯:JIS G 4305、」に規定されている、ステンレス鋼板及び鋼帯の標準厚さ表を抜粋したものです。
SUS304とSUS316・SUS430との違い
SUS316とは
SUS316は、SUS304と同じオーステナイト系ステンレス鋼の代表鋼種ですが、SUS316にはモリブデン(Mo)が添加されており、性質にも違いがあります。また、ニッケル(Ni)の含有量も、SUS304よりも多く添加されており、これらの成分により、SUS316はSUS304よりも耐食性、耐孔食性に優れた鋼種と言えます。
但し、SUS316はモリブデンを含む分、SUS304よりも高価であるため、部品の使用環境・用途などを考慮した上で選定する必要があります。
【補足情報】
モリブデンは、不働態皮膜が傷ついた時に、その場所での表面のクロム量を高め、皮膜の再生力を強める働きをします。ステンレス鋼の局部的に錆が発生し進行する腐食(孔食)に対して、モリブデンはクロムの約3倍の効果があると言われています。
ニッケルは、錆の発生そのものにはさほど抑制効果はありませんが、錆の進行を抑制する働きがあり、錆による孔を開きにくくする効果があります。
SUS430とは
SUS430は、フェライト系ステンレス鋼の代表的な鋼種で、オーステナイト系であるSUS304とは性質が異なりますが、ともにステンレスを代表する汎用性の高い鋼種です。
SUS430はニッケルが含まれていない分、SUS304に比べて耐食性は劣りますが、レアメタルであるニッケルが含まれていない分、安価なため、SUS304と比較検討される事もあります。用途としては、建築内装用、家庭用器具、厨房機器など身近なところに使用されています。
また、SUS430はSUS304に比べて熱膨張率が低く、熱歪みが少ないという特徴もあります。また、SUS430はフェライト系であるため、磁性を持ちます。
SUS430の詳細情報は下記リンクからご確認ください。
SUS430とは?SUS430の特徴やSUS304や類似鋼種との違いについて解説
その他の類似鋼種について
SUS304Cu
SUS304Cuは、SUS304に約1%の銅(Cu)を添加することで加工硬化を防ぎ、成形性を向上させた鋼種です。加工性に優れ、深絞りに適しています。また、銅は硫酸や海水などの一部の環境での耐食性を高めます。一般家庭用器具や建材などに使用されています。
SUS304N1
SUS304N1は、SUS304に窒素(N)を添加し、延性の低下を抑えながら強度を高めた鋼種です。構造用の強度部材に用いられ、板厚の薄肉化による軽量化の効果があるとされます。
SUS304N2
SUS304N2は、SUS304に窒素(N)とニオブ(Nb)を添加する事で、強度や耐力を向上させた鋼種です。構造用強度部材や高圧容器などに使用されています。
しかし、高強度である分、加工性は低くなっています。耐力が高いために塑性変形しにくく、硬度が高いため削りにくい鋼種となっています。また、溶接によって、強度や耐食性が低下したり高温割れが発生したりする場合があるので注意が必要です。
SUS304LN
SUS304LNは、SUS304Lに窒素(N)を添加し、延性の低下を抑えながら強度を高めた鋼種です。また、L材であるため耐粒界腐食性に優れています。石油精製プラント、化学プラントなどに使用されています。
SUS304J1
SUS304J1は、SUS304のニッケル(Ni)を低めにし、銅(Cu)を添加した鋼種で、SUS304に比べて深絞り性・張出し性に優れています。流しシンクやドアノブ、器物、建築金物、厨房機器などに使用されています。
SUS304J2
SUS304J2は、SUS304に銅(Cu)を添加することで加工硬化を防ぎ、成形性を向上させた鋼種です。極軟質で多段絞り性に優れ、深絞り成形性に優れています。風呂釜やドアノブ、精密プレス品などに使用されています。
SUS304について理解できたでしょうか?
60種類以上もあるステンレス鋼の中でも、最もよく使用されているステンレス鋼ですので、特徴などを理解した上で使用されるといいかと思います。
優れた特性を持つため汎用性が高く、流通性も良いSUS304を使用している方は非常に多くいらっしゃると思いますが、使用する条件に合わせて選定すれば、オーバースペックを見直し、コストダウンを実現できるかもしれません。
本記事に関するご質問や、パイプに関するご相談などございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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